福岡高等裁判所 平成5年(ネ)871号 判決 1994年7月14日
控訴人
合資会社興栄社
右代表者無限責任社員
森澤清子
右訴訟代理人弁護士
渡辺彬迪
被控訴人
三浦規矩子
右訴訟代理人弁護士
柴田圭一
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
一 控訴の趣旨
1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。
2 右取消しにかかる被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 事案の概要及び争点
1 請求原因
(一) 被控訴人は、昭和三三年一〇月に控訴人に雇用され、昭和五五年一〇月末までは事務員として、その後昭和五六年三月ころまでは総務部長兼経理部長として勤務し、さらにその後は平成二年八月末に退職するまで専務取締役の地位にあったものである。なお、被控訴人は、右退職時には月額五七万円を支給されていた。
(二) 控訴人は、従業員に対する退職金規定(以下「本件退職金規定」という。)を定め、昭和四一年四月一日から実施している。その内容は原判決二枚目裏末行から三枚目裏五行目まで(別表1及び2を含む。)のとおりである。
(三) 本件退職金規定による退職金支給基準によれば、被控訴人は一五一〇万五〇〇〇円の退職金支払請求権を取得し(その計算方法は、原判決四枚目裏三行目から同六行目までのとおりである。)、うち二六一万七三五〇円が中小企業退職金事業団から支払われたので、控訴人に対し残額一二四八万七六五〇円の請求権を有している。
(四) よって、被控訴人は、控訴人に対し、右退職金一二四八万七六五〇円及びこれに対する支払期日の翌日である平成二年九月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
2 なお、原審においては、被控訴人は、主位的に役員退職金支給基準に基づく退職金を請求し(請求額二三四八万三九〇〇円)、予備的に本件退職金規定に基づく退職金を請求していたが、原判決は、右主位的請求を棄却し、予備的請求を全部認容した。これに対しては、控訴人のみが控訴し、被控訴人は控訴も附帯控訴もしていない。したがって、右主位的請求は当審においては審理の対象とならないから、この関係の請求原因は摘示しない。
3 (証拠・人証略)及び被控訴人本人尋問の結果によれば、原判決七枚目裏六行目から八枚目裏六行目までに認定されているとおりの事実(請求原因(一)及びその周辺の事情)を認めることができ、また、(証拠・人証略)及び被控訴人本人尋問の結果によれば、控訴会社が本件退職金規定を定め、これを実施していたこと(請求原因(二))を認めることができる。
そうすると、本件の争点は、被控訴人に本件退職金規定の適用があるか否かに絞られる(当審における主張整理の結果)。
三 争点に対する当裁判所の判断
1 当裁判所も、本件退職金規定の適用に関しては被控訴人も従業員に該当し、したがって、同規定は被控訴人に対しても適用があるものと考えるが、その理由は、原判決が八枚目裏九行目から一〇枚目表二行目までに説示するとおりであるから、これを引用する。
2 そこで、本件退職金規定に基づいて被控訴人の退職金を計算すると、その額は、原判決一〇枚目裏二行目から一一枚目表一行目までのとおり、一五一〇万五〇〇〇円となり、事業団から支給済みの分を控除すると、残額は一二四八万七六五〇円となる。
3 そうすると、被控訴人の予備的請求は理由があり、これを認容した原判決は相当であって、本件控訴は理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鍋山健 裁判官 西理 裁判官 和田康則)